YouWillの根本的な機能(複式簿記)
YouWillを開発するにあたって、資産と負債の推移表を設けることが1つのテーマでした。
この資産と負債を設けるには、「複式簿記の考え」を取り入れる必要があります。
FPジャーナル(FP協会が毎月発行)のライフプランや他社さんのライフプランソフトのほとんどは
「単式簿記」がベースとなっています。
「単式簿記」では年間収支分の現預金が増減するしか表現できず、
住宅や個別の金融資産の増減を把握することができないという、課題があります。
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単式簿記と複式簿記の違い
単式簿記のライフプランソフト
単式簿記のライフプランソフトは収入と支出のみで、
(支出)生活費 30万円
(支出)ローン返済 7万円
(収入)給与 50万円
のように資金の流れを入力し、その結果、年間の収支が分かります。
その収支が、期初の保有していた現預金にプラスされていきます。
ライフプランが家計簿の延長だったからか、
既存のライフプランの主流はこちらです。
複式簿記のライフプランソフト
複式簿記のライフプランソフト収入、支出、資産、負債、純資産に5つがあり、
(借方) | (貸方) |
(支出)生活費 30万円の発生 | (資産)現預金 30万円の減少 |
(負債)ローン残高 6万円の減少 | (資産)現預金 6万円の減少 |
(支出)ローン利息 1万円の発生 | (資産)現預金 1万円の減少 |
(資産)現預金 50万円の増加 | (収入)給与 50万円 |
のように、貸方・借方にそれぞれ処理をしていきます。
YouWillの入力時に複式簿記の意識は不要で、
生活費●●円と入力、住宅金額やローン条件の入力するだけで、それぞれの仕訳が自動でされていきます。
住宅購入時の処理の例
住宅5000万円を購入し、ローン4500万円を借入し、毎月7万円(年額72万円)の返済の場合
単式簿記のライフプランソフト
単式簿記のライフプランソフトでは、以下のように処理がされています。
■住宅購入時
(支出)頭金 500万円
ローンは毎月または毎年の返済金額を計算するためだけに条件を入力
■2年目以降
(支出)ローン返済 72万円
となります。
複式簿記のライフプランソフト
複式簿記のライフプランソフトでは以下のように処理がされています。
■住宅購入時
(借方) | (貸方) |
(資産)住宅 5000万円の増加 | (資産)現預金 5000万円の減少 |
(資産)現預金 4500万円の増加 | (負債)ローン4500万円の増加 |
その結果、2つの仕訳をまとめると
(借方) | (貸方) |
(資産)住宅 5000万円の増加 | (資産)現預金 500万円の減少 |
(負債)ローン4500万円の増加 |
となります。
頭金は入力していないですが、500万円の現預金が減少しているので
これが頭金相当になります。
■2年目以降
(借方) | (貸方) |
(負債)ローン残高 68万円の減少 | (資産)現預金 68万円の減少 |
(支出)ローン利息 4万円の発生 | (資産)現預金 4万円の減少 |
のようになり、ローンの残高が減少していきます。
■建物の価値の減少
YouWillでは建物の価値が減少するように処理がされています。
減価償却費は非現金支出費用のため、キャッシュフローには反映せず、
建物の価値だけが減少するようになっています。
建物の価値が減少した分、固定資産税評価額も減少し、固定資産税・都市計画税も減少するようになっています。
複式簿記のライフプランソフトのメリット
⑴資産形成をする上で、資産の推移・増減がわかる
資産は金融資産のみでなく、不動産(住宅・投資用)、自社株など多岐に渡ります。
包括的にライフプランを行うためには、資産・負債も必要となってきます。
また、富裕層向けのコンサルティングでは、キャッシュフローより資産・負債の推移が重要になってきます。
⑵相続のシミュレーションもできる
現時点のYouWillに相続の機能はありませんが、
資産と負債のデータがあるということは、相続財産の推移がわかるということです。
1次相続と2次相続のタイミングを寿命年齢でコントロールすれば
現時点の財産でなく、20年後の相続財産の価値が分かります。
20年の間に暦年贈与をしたらどうなるかなど、比較すると良いかもしれません。
⑶資産の利用の効率性などがわかり、アドバイスの質が向上
ライフプランはパーソナルファイナンスの分野になりますが、
コーポレートファイナンスや不動産ファイナンスに比べると
一般化された指標などが少ないと感じます。
ライフプランで収入と支出に加え、資産・負債のデータを持つことで
企業分析で使うROA、流動比率、デットエクイティ・レシオのような指標を
家計でも「資産活用の効率性」、「手元資金の割合:防衛資金」、「負債比率の適正化」などの新たな指標を作ることができます。
家計のどの点に課題があるか分かり易くなり、アドバイスの質が向上するものと思います。